2009年11月30日月曜日

アフガン国際円卓会議で日本が果たすべき役割を再確認

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(30日 東京)11 月23日から25日の3日間、都内の某ホテルでアフガニスタンに関する国際会議『アフガニスタンの和解と平和に関する円卓会議~~「支えあう安全保障 (Shared Security)」をめざして~』が開催されました。会議は、外務省の協力のもと、「世界宗教者平和会議」(WCRP)日本委員会「支えあう安全保障(Shared Security)議員連盟」(JPSS)の共催により開催され、各国の参加者が自由に気兼ねなく討論できる場を設けるため完全非公開で行なわれました。 また、参加者の安全確保のため、最終日に記者発表されるまで内容は一切外部に伏せるという徹底した体制下で行なわれました。

会議では、アフガニスタンをはじめパキスタン、サウジアラビア、イラン等の周辺国を含めた計18カ国から外交、軍事、学会、民間シンクタンク、財団、宗教者団体等の主要関係者を招いて活発な討論が行なわれ、ここで得られた洞察を提言としてまとめ記者発表が行なわれました。

鳩山総理と岡田外相に八項目の提言書を手交

この記者発表に先立ち、総合司会を務めた参議院議員犬塚直史JPSS会長代理を含む代表団はそれぞれ二手に分かれて首相官邸と外務省を訪れ、鳩山総理大臣と岡田外務大臣にそれぞれ提言 書を手渡しました。提言を受け取ったとき、会議の共催者である世界宗教者平和会議(WCRP)の庭野日鑛理事長率いる代表団に対し、鳩山総理は次のようにコメントされたそうです。

「政治にできないことをやってくださり、ありがとうございました」

鳩山総理に提言書を手交するWCRP日本委員会庭野日鑛理事長

岡田外相に提言書を手交する代表団の面々
(外相正面にベンドレル議長、右にスタナクザイ大統領顧問、WCRP宮本事務総長)


鳩山総理と岡田外相に渡された八項目にわたる提言のうち、「日本の役割」という項目には次のようなことが書かれていました。

(仮訳)
 アフガニスタン及びその近隣国において日本が高い評価を得ているという現実を踏まえ、日本が他の主要ドナー国とともに、アフガニスタン政府が主導する平和と和解に関するプログラムを支援する中心的役割を果たすことを強く期待する。
 我々は、日本政府が今後もアフガニスタンの復興に貢献できるよう、支援の透明性、アカウンタビリティー(説明責任)、そして実のある結果を確保するため、支援の効果的な実施を可能にするような仕組みを導入する提案を歓迎する。


さらに「イスラム諸国の役割」という項目では、イスラム諸国の参加者や宗教者らの考察が取り入れられ、次のようなことが書かれていました。

(仮 訳)
 我々は、過激派組織による暴力の拡大を防ぐため、イスラム諸国間のいっそうの協力推進の必要性を唱え、個人あるいは集団が暴力の連鎖を断ち切れるよう、マドラサ(神学校)改革等の脱過激化政策(de-radicalization)、すなわち自爆テロや麻薬密売等の非イスラム的な活動に対する否定の いっそうの推進を訴える。
 アフガニスタンにおける平和と和解を推し進めるため、世界宗教者平和会議(WCRP)を推進役に、著名なイスラム法学者を召集して正しきイスラムのあり方について教えを広めることを提案する。
 我々は、アフガニスタン政府の要請に応じて政治・宗教指導者に対して二聖モスクの守護者アブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王陛下 がその影響力を発揮して調停を行なわれることが、アフガニスタンにおける平和構築の力添えとなることの重要性を再確認した。

このような全八項目にわたる提言をまとめるに至った今回の会議は、アフガニスタンにおける日本の支援のあり方や役割を再確認し、各国関係者間の信頼醸成を目指すというその当初の目的を果たしたといえます。


○報道発表   


○関連報道 


○その他関連情報 

2009年10月13日火曜日

PNND総会で『北東アジア非核化地帯』構想に注目集まる


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(13日 ニューヨーク)10月11日と12日の二日間、ニューヨークで核軍縮・不拡散議員連盟PNND: Parliemantarian Network for Nuclear Non-proliferation and Disarmament)2009年度総会が開かれ世界各国から議員や専門家が集った。「核廃絶の前進における議員の役割」をテーマに掲げる同会議では、総勢500名の会員から成るPNND会員の議員や専門家らが、幾つかのセッションにテーマを分けて核軍縮に関する積極的な議論を行った。

同会議が初めての顔合わせとなったPNND共同代表のリ・ミギュン(Mikyung Lee)議員(韓国)とPNND日本事務局長でグローバル評議委員の犬塚直史議員は、『北東アジア非核化地帯』構想の推進に向け互いの考えを披露し、この構想実現に向けて日韓の協力を緊密化するプランの策定に着手することを約束し合った。

2008年に民主党核軍縮推進議連が採用を決定した同構想の条約案(2004年、NPOピースデポ作成)によれば、「北東アジア非核化地帯」構想では、現行の六者会合の枠組みに含まれる6カ国、日・朝・韓の3国と米・露・中の3国からなる「スリー・プラス・スリー」形式をとり、核への非依存(non-dependence)、消極的安全保障(negative security)、そして、「原爆投下が都市や市民に与えた被害の実相を、現在及び将来の世代に伝達すること」が規定されている。

総会最後のセッションに続いたランチタイムの公開パネルでは、2008年10月に国連の潘基文事務総長が提唱した『核軍縮に向けた5つの提案』をテーマに、その実現のための方法論について議論が交わされた。Global Security Institute(GSI)代表のジョナサン・グラノフ(Jonathan Granoff)を議長に迎えて行われた同パネルでは、日本国会から犬塚直史議員、アメリカ連邦議会からデニス・クシニッチ(Dennis Kucinich)議員」、韓国国会からはリ・ミギュン(前出)議員、そしてドイツ連邦議会からはウタ・ツァプフ(Uta Zapf )議員らが参加し総勢4名のパネリストにより議論が行われた。

最終日の12日、総会はグローバル評議会で各国議員団による活動報告や各地域の最新情報を共有され、今後のパートナーシップや資金調達についての問題が協議され対応が決定された。

日本の犬塚議員を含むPNNDの上級議員団はその後、潘基文国連事務総長と面談し、核兵器禁止条約への賛同を求める議員連盟声明文を事務総長に手渡した。

2009年6月16日火曜日

参考人質疑:国連の専門家を招いて海賊対策を審議


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ソマリアの海賊たちの5つの活動拠点(画像をクリックすると拡大されます)

16日(火曜)の参議院外交防衛委員会では、日本独自の海賊対処法である『海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案』を議題に、参考人質疑が行われた。4人の参考人の一人として、現在東京外国語大学大学院に籍を置くデズモンド・J・マロイ氏(Demond J. Molloy)が国連の紛争予防の専門家として呼ばれた。マロイ氏は委員会の各面々に対し、より「頭脳的なアプローチ」を模索すべきだと提案。デファクト破綻国家ソマリアに端を発する海賊問題については、まったく別の取組み方が必要であると説いた。

マロイ氏は陳述の中で、現在各国が展開中の国際対策部隊について、持続可能な取組みではなく、また費用対効果も少ないと評価。
「応急的な措置」に延々と取り組むよりも、情報収集と警察活動を効果的に行うほうが「より大きな効果が望める」とした。また、現行の作戦では「モグラ叩き」(英語ではcockroach effect)のように、一カ所で叩きのめしても、全体で場所を移動するだけで有効な解決策にはなり得ないとし、海賊対処法案の起草に当たっては次の一連の提言を検討することを委員らに勧めた。
  • 海賊行為にかかわる主要なアクターたちの慎重なマッピング(把握)
  • 国連及び西側諸国による主要な加害者たち(軍閥指導者等)の刑事訴追
  • 氏族等により不法に蓄積された海外資産の没収(ほとんどの主要な氏族は二重国籍のため資産は西側諸国に置かれている)
  • ソマリア領海内における魚資源の略奪と不法投棄に対する国際社会の認知と、これら不法な活動にかかわる者に対する制裁の実施
  • SAACID等のイシュー指向の市民団体に対する投資を通じたコミュニティの能力開発によるコミュニティ・ベース補償の実施
各委員らは、日本の対策部隊への参加が短期的対応としても実効性があるもなのかどうか、またマラッカ海峡でのRECAAP(アジア対策地域協力協定)の成功などをどのように生かし、最大化していくかなどについて議論を交わした。RECAAPは日本の海上保安庁が先導して創設したイニシアチブであるが、参考人の一部からは、長期に及ぶ取組になるが「ソマリア版RECAAP」の創設を検討することも必要ではないかという意見があった。

モロイ氏の参考人質疑の詳細については以下を参照:

2009年2月10日火曜日

新・テロ特措法特集(関連資料集、反証、提言等)

政府与党の給油支援活動特措法案(新テロ特措法)は、第168回臨時国会において可決・成立しまし た。しかし、民主党の対案であった「テロ根絶法」は参院では可決され、衆院では採決を得ないまま継続審議となっています。明けて第169回通常国会におい ては、特措法の恒久化論議の材料として両党により注目されましたが十分な審議は行なわれませんでした。現在の第170臨時国会においても、前福田内閣によ り新テロ特措法の“2年延長”を盛り込んだ改正法案の可決が閣議決定されており、後任の麻生総理大臣も所信表明演説で同法案の可決を今国会の三大目標とす る旨を明言しました。

10月21日、民主党の『テロ根絶法案』は敢え無く衆議院で否決され、政府与党の新テロ特措法改正案は賛成多数で可 決。法案は参議院へと送られました。22日、同法案は参議院で審議入りし、23日、28日の2日間の日程で外交防衛委員会で審議され、採決がとられる予定 です。


したがって当事務所でも継続して、新テロ特措法を恒久化論議を行う上での重要政策課題として当ブログ群にて扱うことにしました。以下は、同法の審議にあたり先の臨時国会・通常国会で政府各省により提出された公式資料及び当事務所作成各資料の一覧です。


I. テロ特措法審議に於ける政府各省提出資料(07年8月~)

  ●資料1 (内閣官房)『テロ対策特措法の概要』
  ●資料2 (外務省)『「テロとの闘い」等への各国の部隊派遣状況』
  ●資料3 (防衛省)『自衛隊の活動状況及び実績』
  ●資料4 (外務省)『最近のアフガニスタン治安情勢』
  ●資料5 (内閣府)『補給支援活動特措法案*の概要(新法案)』


II. 新テロ特措法関連政府参考資料(08年6月~)

  ●資料1 (防衛省)自衛隊の活動状況及び実績(平成20年2-5月度) 
  ●資料2 (防衛省)自衛隊の活動状況及び実績(平成20年2-8月度)
  ●資料3 (外務省)平成20年9月『各国の部隊派遣状況』他☆NEW☆

III. テロ特措法関連用語集(Wikipedia ※当事務所責任編集)

  ●用語1  国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)とは?
  ●用語2  武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)とは?
  ●用語3  国防エネルギー支援センター(DESC)とは?
  ●用語4  非合法武装集団の解体(DIAG)とは?
  ●用語5  国際治安支援部隊(ISAF)とは?
  ●用語6  不朽の自由作戦(OEF)とは?
  ●用語7  海上治安活動(MSO)とは?
  ●用語8  海上阻止行動(MIO)とは?
  ●用語9  安保理決議1368とは?
  ●用語10 安保理決議1386とは?
  ●用語11 安保理決議1833とは?
  ●用語12 テロ根絶法案とは?
  ●用語13 ボン合意とは?

IV. テロ特措法に関する総合報道資料(07年9月~)

  ●資料1 安保理の採択した「謝意」決議の舞台裏(ロシア編

  ●反証1 延長反対で陸自の危険度が増す?
  ●反証2 小沢代表は単にISAFへの参加を表明しているのではない
  ●反証3 民主党対案が目指すのは「国際益」の実現

VI. テロ特措法に関する世論調査結果(07年8月~)

  ●統計1 Yahoo!実施の意識調査結果(07年8月度)
  ●統計2 旧テロ特措法に関するアンケート(賛成・反対?) 実施中!
  ●統計3 テロ根絶法に関するアンケート(賛成・反対?) 実施中!


VII. テロ特措法に関する秘書・勝見の所感(07年9月~)

  ●所感1 新安保理決議起草の動きは民主党の勝利といえるか
  ●所感2 日本の採るべき道は二者択一ではない★NEW★

VIII.新テロ特措法に関する犬塚の提言(07年10月~)

  ●提言1 給油から平和構築へ 日本外交の転換点
  ●提言2 国連改革につながる骨太の議論をせよ 

IX. 新テロ特措法に対する民主党の対案(07年11月~)

  ●資料1  民主党アフガン対策案概念図I(概略編I)
  ●資料2  民主党アフガン対策案概念図I(概略編II:導入)
  ●資料3  民主党アフガン対策案概念図II
  ●資料4  民主党アフガン対策案概念図III
  ●資料5  「油より水」衆院テロ特委で答弁に立つ
  ●資料6  外交防衛委員会、いぬづかの質問で紛糾
  ●資料7  外防部会で調査報告後、委員会質疑に臨むⅠ
  ●資料8  外防部会で調査報告後、委員会質疑に臨むⅡ
  ●資料9  民主党のアフガン和平素案、国際監視団展開を提案★NEW★
  ●資料10 伊勢崎賢治教授、中東アフガン調査の真の目的を語る★NEW★

X. 特措法恒久化(恒久法)関連資料(08年02月~)

  ●資料1 米軍駐留経費負担(1)防衛省編 
  ●資料2 米軍駐留経費負担(2)独国防白書編 
  ●資料3 米軍駐留経費負担(3)参議院外交防衛委員会編

2009年2月1日日曜日

転載:民主党のアフガン和平素案、国際監視団展開を提案(共同)

民主、日本主導でアフガン和平 政権交代にらみ素案

民主党が政権交代後に実現を目指すアフガニスタン安定化策の素案が三十一日、判明した。

国連にも働き掛け、アフガンに軍隊を駐留させる米国など関係国と、反政府武装勢力タリバンの双方に戦闘停止を要請。アフガンとパキスタン国境地帯から米軍、北大西洋条約機構(NATO)軍、パキスタン軍が撤退、代わりに日本を含む複数国でつくる国際停戦監視団が現地に展開する構想だ。日本政府がホスト役となり、和平実現に向けた国際会議を東京で開催することも想定している。

現状では停戦合意の形成は極めて困難とみられ、党内で異論が出ることも予想されるが、小沢一郎代表は基本的に了承しており、鉢呂吉雄次の内閣」外相を中心に近く成案をとりまとめる考えだ。

アフガン支援に関し小沢氏は従来、国連決議に基づき活動している国際治安支援部隊(ISAF)への自衛官派遣を実現させる方針を表明していたが、戦闘が泥沼化する中、対話を基調とした包括的な平和構築を目指す路線に転換した。

素案によると、国際停戦監視団は、これまで戦闘に関与していないサウジアラビア、ヨルダンなどのアラブ諸国と日本で構成。武器は携帯せず、アフガン警察やパキスタン側の自警組織の治安維持を支援する。日本からは自衛官の派遣を想定している。


民主、日本主導でアフガン和平 政権交代にらみ素案(2009/02/01 共同通信)
※↑ここまで、インターネット版



※↓ここから、新聞記事版
日本主導でアフガン和平 米国などに停戦要請br>
タリバン側との対話を進めるため、旧タリバン政権の最高指導者オマル師を拘束や攻撃の対象から外すことを米国に要請する一方、アルカイダ系の国際テロ組織を支援しないようタリバン側を説得する。

構想実現のため超党派の議員連盟を発足させ、この議連を受け皿に、アフガンとパキスタンの閣僚級とタリバン代表などによる実務者協議を開催。協議が調えばアフガンのカルザイ、パキスタンのザルダリ両大統領を東京に招き、正式合意を図るとしている。

国際監視団を展開素案のポイント
一、停戦を実現し、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯から米軍、北大西洋条約機構(NATO)軍、パキスタン軍が撤退
一、アラブ諸国と日本で構成する国際停戦監視団が国境地帯に展開
一、国際停戦監視団は武器を携帯せず、アフガン警察、パキスタンの自警組織を側面支援
一、超党派議連を受け皿に、タリバン代表も参加するアフガンとパキスタンの閣僚級協議をあっせん。両国大統領の会談を東京で開催
一、旧政権タリバンの最高指導者オマル師を拘束や攻撃の対象から外すよう米国に要請

【解説】民主党がアフガニスタン安定化に向けた外交構想をまとめるのは、次期衆院選で政権交代を実現した場合、インド洋での海上自衛隊の給油活動を停止する方針のため、これに代わる何らかの日本の貢献策を示す必要性があるからだ。

アフガンでの「テロとの戦い」に力を入れるオバマ米政権が停戦に応じる展開は現状では想定しにくく、日米関係が悪化するとの批判も予想されるが、担当者は「現地に駐留する米軍は疲れ切っている。米国は『出口戦略』の検討も始めており、話し合いの余地は十分ある」と指摘する。

構 想の大きな特徴は、自衛官派遣を想定する国際停戦監視団について、小火器も持たない“丸腰”を基本とした点だ。素案作成にかかわったメンバーは「これまで の外国軍隊の関与とは違うことを明確にする。武器を持たないことは極めて重要なメッセージになり、平和構築の力になる」と強調する。

実際、自衛隊が丸腰で国連平和維持活動に参加している「国連ネパール政治ミッション」(UNMIN)の例もある。ネパール国軍とネパール共産党毛沢東主義派の和平合意を受け、二〇〇七年三月から自衛官が武器を持たず、兵器庫の監視などに従事している。

ただ治安情勢の違いは明らかで、アフガンの現状を知る外務省関係者は「派遣すれば犠牲者が出るのは間違いない」と指摘する。

●背景資料:アフガニスタン・パキスタン・サウジアラビア調査報告(PDF)


【免責事項】上記解説で触れられている「担当者」とは犬塚議員のことです。この記事は当事務所が共同通信から受けた取材に基づいて執筆され たもので、後半の新聞紙面については共同通信に転載許諾を頂いた上で全文を掲載しております。尚、ブログ転載するに当たって記事のレイアウト等のみ当時事 務所にて編纂させて頂いております。

文責:参議院議員犬塚直史事務所 外交政策担当・勝見貴弘