2007年8月10日金曜日

ウィン米下院議員の支持決議提出時の発言

国連緊急平和部隊決議提出時の議会発言録

アルバート・ウィン君 議長、ほとんどのアメリカ国民は、電話1本さえあれば、緊急時には警察、消防、緊急サービスをいつでも呼び出せることを知っています。しかし世界のほとんどの場所では、人道的な危機が発生したときに同じように呼び出せる番号というものは存在しません。

本日、ジム・リーチ議員と私は、全世界のための国際緊急サービス、すなわち「国連緊急平和部隊」(United Nations Emergency Service:UNEPS) の創設を奨励する決議を議会に提出いたしました。この部隊は、平和維持要員、文民警察、軍人、民間人道支援、司法および救済支援のプロフェッショナル からなる、十全に訓練され充実した装備を持つ15,000名の要員から構成されるもので、激しい紛争や自然災害など、危機的状況の早期の段階で即時に対応 することが可能です。

UNEPSは、紛争地に最初に入り最初に出るfirst-it, first-out(初 動対応)能力を保有し、深刻な危機への対応を迫られている現行の国連の体制を補完する役割を持ちます。国連はしばしば、緊急時に即応するだけの能力、人 材、資源に恵まれないことがあります。たとえば、紛争地帯に平和維持部隊を派遣する決定を今日、国連の安全保障理事会が下したとします。この場合、部隊の 到着から派遣を実現するまでに3~6カ月はかかります。この3~6カ月という「話し中」の時間は、緊急に連絡(対応)を必要とする人々にとってはあまりに も長い待ち時間です。

ジェノサイドなどの人道的危機の場合、このような対応の遅れは、数百~数千にも及ぶ無辜の人々にとっては、死刑宣告も同然となります。1994年のルワン ダの虐殺では、たった6週間のうちに80万人以上の人々が虐殺されました。当時の国連は、虐殺を止めるための即応手段を持たなかったのです。

現在議会では、国連の改革について真摯な議論が行われております。しかしここで忘れてはならないのは、国連に説明責任や透明性を求めることも重要だが、国連がその使命をきちんと果たせるようにすることも同じように重要だということです。

国連緊急平和部隊UNEPSは、常時、臨戦態勢でいられる即応のプロフェッショナル集団です。危機が発生した場合、これまでは数カ月はかかっていたと ころを、ものの数日間から数週間で対応できます。これはすなわち、世界中でそれだけ多く人命が救われることを意味します。

UNEPSは、常に即応を可能にするために訓練を欠かさず、またそのための基本行動原則に准じます。紛争現場ではよくみられるような、複雑な事態に対して も、民軍の連携により解決に当たるためのベストプラクティスについて修練することで、民軍協力に対応したユニットの派遣を可能にします。これにより、混乱 と混沌が渦巻く悲惨な現場においても秩序と安心をもたらすことができるのです。

UNEPSのユニットには、紛争処理における法の支配の復活を支援する文民警察のユニットも含まれます。コソボでは、このようなユニットはまだ存在してい ませんでした。国連が国際的な文民警察隊を派遣した頃には、すでに地元の犯罪組織による支配が進められており、ただでさえ破壊し尽くされた社会生活が、さ らなる恐怖と混沌に包まれる状況に陥っていました。

議長、合衆国政府は、イラクやテロに対する取り組みに非常に力
を入れております。しかし、安全保障上の問題は、もはや我が国が単独で取り組める問題ではありません。我が国における安全が、他の国における安全と繋がっていることは、近年ますます明らかになってきております。

破綻寸前の国家は、あっという間に破綻国家へと脱落し、テロや国際犯罪の温床となります。このような国家の破綻を防ぐための行動を起こすことが、我が国の国益に適う行為であることは明らかです。

さらに言わせて頂ければ、UNEPSは経済的にも我が国の国益に適います。なぜなら、事態が切迫してどうしようもなくなるのを待ってから対応するよりも、より早期に介入して事態の収容を図ることのほうがより負担が軽いからです。

紛争激化防止のためのカーネギー委員会(Carnegie Commission on Preventing Deadly Conflict)の試算によれば、国際社会は復興努力(Reconstruction)よりも予防(Prevention)に力を入れることで、90年代の紛争介入で費やした200億ドルのうち、130億ドルも節約できたそうです。

国連緊急平和部隊UNEPSは、費用対効果の高いバーデン・シェアリングを行うための有効な媒介となります。UNEPSの効率的な運用により、国連ひ いては米国が紛争処理に費やす費用を大幅に削減することが可能だからです。勿論、UNEPSの創設により我が国が抱えるすべての問題が解決するわけではあ りません。また、ジェノサイドや残虐な犯罪が世界でなくなるというわけでもありません。UNEPSは、深刻な危機の発生時に、ただちに平和と安定と救援を もたらすために国連の機能を補完する役割を持つのです。

ルワンダ、ハイチ、シエラレオネ、ボスニア、コソボ、リベリア、コンゴ民主共和国、そしてダルフール。これらは、国連やその加盟国がより早期に、強い意志 を持って対応しなければならかった事態のほんの一例です。その対応がまずかったため、より多くの人が死に、苦しみました。本来なら、その必要はなかったは ずです。

UNEPSならば、数百万にも及ぶ命を救い、数十億ドルにも及ぶ予算を節約することができます。UNEPSのコンセプトは、Citizens for Global SolutionsHuman Rights Watchといった人権NGOにも歓迎されている。私は、各院に席を置く我が友人たちに、リーチ議員や私とともにこの重要な決議を支持するよう呼びかけたい。

アメリカ合衆国下院議員
アルバート・ウィン(Albert R. Wynn

出典:CONGRESSIONAL RECORD
『Extension of Remarks March 17, 2005』
(2005年3月17日 合衆国下院決議H. RES. 180の発言記録)

2007年8月9日木曜日

元国連難民高等弁務官・緒方貞子氏の賛同の言葉

"The UNEPS initiative directly responds to the widely recognized need to protect people caught in deadly conflicts. While serving as United Nations High Commissioner for Refugees, I pleaded on numerous occasions for the rapid deployment of specialized forces. Without such presence, military elements could not be separated in refugee camps; humanitarian corridors were seldom set up to allow the victims safe exits; and all too often, innocent civilians were left in the midst of fighting. Effective, trained and specialized standing forces would have been invaluable."

- Sadako Ogata, Former United Nations High Commissioner for Refugees

「UNEPS 構想は、激しい紛争の只中に居る人々を保護するという、広く認識されている必要に対する真摯な対応です。国連難民高等弁務官時代、私は幾度となく、専門部 隊の緊急展開を要請したことがありました。そのような部隊の存在がなければ、難民キャンプから軍事的要素を取り除くことはできないからです。その結果、こ うした危険な場所から安全に被害者を退避させる為の『人道の回廊』を確保することがほとんど出来ませんでした。その反対に、戦闘の真っ只中に身を守るすべ を持たない無辜の人々が置き去りにされてしまうことが余りにも多くありました。効果的で、十分に訓練された専門の即応部隊の存在があれば、その貢献は 計り知れないものとなったでしょう」

元国連難民高等弁務官 現国際協力機構(JICA)理事長
緒方貞子

Source: 『A United Nations Emergency Peace Service』(2006年)