2007年6月20日水曜日

犬塚議員、参院本会議でイラク特措法延長の反対討論を担当


以下は、本日午後1時過ぎより始まる、参議院本会議におけるイラク特別措置法延長に関する審議での反対討論原稿全文です。議員本人より特別に事前公開の許可が下りたので公開いたします(写真は2006年3月17日の参院本会議のもの)。

2007年6月20日 参議院本会議イラク特措法延長反対討論

民主党・新緑風会 犬塚直史
民主党・新緑風会の犬塚直史です。

私は会派を代表してイラク特措法の延長に反対の立場から討論を行います。民主党は自衛隊派遣を直ちに終了させるよう、今般イラク特措法廃止法案を提出致しました。日本政府の対応にはまったく主体性・積極性が欠けており、結局のところ米国の出方次第というやり方であります。主張すべきことははっきりと国際法に基づいて主張する態度が信頼されるのであり、ただ同盟国に付き合うような外交を続けていれば、結局は同盟国の信頼を失い、国際社会の信頼を失い、我国の国益を失うものであります。以下にその理由を順次述べて参ります。

第一に、対イラク武力行使が明らかな正当性を有していないことであります。戦争を含む武力行使が違法とされる現代において、その違法性が阻却されるのは自衛権の行使と国連憲章7章下の集団安全保障の2つのみであり、これは武力行使の正当性を判断する大前提であります。にもかかわらず、米国が最後の最後まで希求した明示的な安保理決議がフランスなどの反対であきらめざるを得なかったことは周知の事実です。集団安全保障の発動とするには無理があります。これに加えて、事後の国連報告がないことから、自衛権の発動でないこともまた明らかであります。

こうした事態において我国は安保理決議1483に基づく人道復興支援はしっかりと行うべきですが、正当性のない武力行使を支持するのではなく、せいぜい理解の表明にとどめるという、是は是非は非の立場をとるべきであります。

第二に、「自衛隊の行くところが非戦闘地域である」という開き直った小泉発言にみられるように非戦闘地域の説明がまったくの虚構であることです。

第三に、自衛隊の対応措置について政府の情報開示が不十分であることです。我が参議院外交防衛委員会の質疑においても、しばしば新聞を読んだ方が早いと思われるような質疑を行わざるを得ず、さらには質疑時間もしっかりと確保されない状態で審議さえ充分に行われず、最後は強行採決というやり方は国会軽視といわざるを得ません。与野党に係らず国益の実現を議論すべき外交防衛に係る委員会で、このような運営が行われることは大きな問題であります。

第四に、撤退に関する我国の方針、出口戦略がないことです。そもそもなぜ2年間の延長なのか合理的な説明がされず、なにをもって自衛隊による措置を終了させるかも明らかにされていません。
自衛隊派遣の根拠となっている安保理決議1483の目的は、イラク国民の援助、食料・医療品の提供、武装解除と治安維持、インフラ整備、法の支配、人権保護、国連機関と非政府組織の調整、行政機能支援、文民警察の再建などであります。

こうした実に多岐にわたる平和の構築と国づくりに、わが国がどのように係るのか、また派遣される自衛隊員を始め多くの関係者は、どこまで危険を冒さねばならないのか。情報収集能力をはじめ、NGOとの連携、軍事、文民警察、医療などの緊急支援、インフラ整備などにわたる我国の総合力が試されることになります。

しかしながら、Show The Flagといわれて自衛隊を出した我国には、冷静な判断と状況分析に基づいて意思決定を行う意思が欠如しているといわざるを得ません。アメリカの行動にある程度お付き合いが必要だろうという安易さが最大の問題であります。我国はいつまでこのような外交を続けるのでしょうか。

事態は悪化の一途をたどっています。本年5月24日までに米兵の戦死者は3,527名、負傷兵は25,549名に上っています。その一方で一般市民の被害は桁違いであります。

日本の約1.2倍の国土に2,700万人の人口を持つイラクで、開戦以来約6万4千人の民間人が直接の戦闘で死亡、650,000人が戦闘状態の中で死亡しています。さらに本年5月末現在で220万人が国外難民、200万人が国内難民となっており、合計で全人口の2割、約500万人が被害を受けています。

本年6月5日のUNHCR国連難民高等弁務官事務所のレポートによれば、220万人のイラク人が難民としてヨルダンとシリアに逃れています。その他の近隣諸国ではイラク難民をほとんど受け入れていません。また、イラン・ドイツ・オランダ・イギリス・スエーデンの5カ国合計で311,800人のイラク難民を受け入れていますが、こうした上位難民受入国に日本の名前は出てきません。我国の貢献が見えにくい原因がここにもあるのではないでしょうか。

シリアに逃れたイラク難民の一人、41歳で3人の娘の母、Hala Numan氏によれば、村から逃れるのは、公共サービスがなくなり、殺人や強姦、誘拐が日常茶飯事になり、法の支配がなくなり、地域が弱肉強食のジャングルと化すからであり、自分の娘を守るには他に方法がないからであります。

このような地域に2003年10月、我国は当面の支援として15億ドルの無償、中期的な復興ニーズに対する円借款に35億ドル、合計最大50億ドル・約6000億円の復興支援を表明しています。また我国はジャパン・プラットフォームを通じて2,700万ドル約30億円をNGO経由の支援に使っており、現在イラクでは6つの国内NGOが活動をおこなっています。しかしながらこうした支援計画と、航空自衛隊が危険を冒しながら3機のC-130Hで累計約500トンの資材をエルビル、バグダッド、バスラ、アリ・アルサレムの4都市の間を運行することは無関係に行われているといわざるを得ません。

さらに、価値の外交を標榜し、自由と繁栄の弧という大きな構想を打ち出した日本が、掛け声倒れにならないために注意すべき地域は実に多く存在します。北ウガンダの紛争で100万人以上の難民が発生し、20万人以上の子供が徴兵されています。スーダンの難民は200万を数え、レバノンやコートジボワール、スリランカでも看過できない事態が起こっています。

今後我国がこうした事態に積極的主体的に関与するためには、効果的なODAの使い方はもちろんのこと、我国から国際協力活動に携わる人たちにとって、そうした活動がキャリアと成りえる社会制度の整備も不可欠であります。

それと同時に、こうした国際平和協力活動がいかに適時適切に展開され得るのか。出来るだけ早く現場に行くことはその分危険を伴うことになります。自己完結型の活動が出来る自衛隊が、安全確保、災害復興、その他さまざまな得意分野を互いに提供する民軍協力を視野に入れてこそ、本来任務となった国際平和活動を効果的に行うことができるのではないでしょうか。

我国は集団安全保障における武力行使には踏み込んでおりません。しかし、どの国が行う武力行使であっても、重大な脅威があり、これを防ぐに他の手段がなく、必要最低限の均衡性をもっておこなうという自衛権の発動にも似た3要件に加えて、正当な意図と合理的な見通しという5原則を満たす必要があることは、2005年の国連サミットで提言された通りであります。今後国連安保理において、ある事態には対応するが他の事態には無関心という、恣意的運用を避けるためにも、こうした原則を育てていくべきであります。

いずれにしても、今回の無原則なイラク特措法の延長には断固として反対することを申し述べ、日本外交の柱である人間の安全保障を真摯に追及すべきであることを指摘して、反対討論を終わります。

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